ライター編集者・友光だんご日記

編集者/ライター・友光哲(友光だんご)の日記です。

「誰よりも“奥信濃の男”になりたいんです」『鶴と亀 禄』出版記念イベントレポート

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インパクト満点のカーラーを巻くばあちゃん。表紙からして只者ではないオーラが漂うこの写真集『鶴と亀 禄』、みなさんもうご覧になったでしょうか?

 

『鶴と亀』とは…

“じいちゃんばあちゃん×ヒップホップ”をテーマに、長野県飯山市に住む小林直博くんが兄とともに制作してきたフリーペーパー。2013年8月に創刊し、現在までに5冊を刊行。日本全国の書店やカフェ、ゲストハウスなど約200ヶ所で配布を行ってきた。 

 

そして、これまでの活動の集大成となる作品が、『鶴と亀 禄』なのです。

 

↓『鶴と亀 禄』の収録内容はこちらの記事をご覧ください!

 

写真集の発売日となった9月18日、小林くん、そして「鶴と亀」の地元である奥信濃の長野・飯山で、出版記念イベントが開催されました。その模様をレポートいたします!

 

飯山駅近くのイベント会場「なちゅら」には、開始1時間前から何人ものお客さんの姿が。

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「直販兄弟」というユニークな売り方に挑戦している『鶴と亀 禄』ですが、この日はいち早く本を購入できる貴重な機会。販売ブースでは、続々と写真集を購入する人の姿がありました!

 

会場には、飯山の「うまいもん」の店も出店しています。

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こちらは焼きカレーが名物な地元の店「ペンティクトン」の木原孝さん。イベントへの意気込みがリーゼントになったようです。

 

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リーゼント頭で木原さんが販売するのは「ヤンキーマカレー」。地元・奥信濃農園の「やんちゃ豆」入りです。

 

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地元からもう1店、「ギャロメ食堂」からは名産「みゆき豚」をのせたうどんが。甘辛い豚が麺と絡んで絶妙〜!

 

飯山のフードを楽しんでいたら、あっという間にイベントの開始時間がやってきました。

 

市長も登場して、第1部スタート

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小林くんとともに登場したのは、写真集の編集を担当したオークラ出版の長嶋瑞木さんと、デザインを担当した中屋辰平さん。全員20代の3人チームで『鶴と亀』の写真集は作られました。

 

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そしてなんと、飯山市長も登場!

市長:私自身、小林くん、そして『鶴と亀』のいちファンです。登場するおじいちゃんおばあちゃんも、ほとんど知ってる人(笑)。『鶴と亀』を通じて、小林くんは飯山の人の魅力を引き出してくれたと思います。

と、愛のこもったコメントが。噂には聞いていましたが、小林くんの「飯山の星」感がすごい…!

 

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制作チーム&市長で鏡開きをして、イベントが始まります!

 

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まずは制作チームによる写真集の裏話から。最初の話題は「小林くんの強すぎるこだわり」について。

 

中屋:ページのデザインを小林くんに見せると、気まずそうな感じは出しつつ『全然ちげえっすねー』という答えが返ってきて。イメージと違うんだろうなと思って、そこから何度もやりとりを重ねました。

 

フリーペーパーの『鶴と亀』では、小林くんが写真だけでなく、デザイン・編集まで手がけていました。他のデザイナーさんと制作するのは、写真集が初めての機会。そのため、「自分の頭にあるイメージを人に説明するのに苦労した」と、小林くん。

 

長嶋:1Pにここまで時間をかけるのか!というくらい、小林さんと中屋さんはとことん話し合っていました。私も意見を言うんですが、どこかずれてるらしく(笑)。二人の波長が合っていて、編集者として羨ましかったです。

 

3人の絶妙なチーム感も伝わってくるやりとりが続きます。

 

今回の写真集のために、沖縄と秋田での撮影も行われました。

信濃のじいちゃんばあちゃんを撮り続けてきた小林くんから見た、沖縄&秋田の感想は…

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小林:沖縄のじいちゃんばあちゃんはシャイで、コミュニケーションをあまりとろうとしない。野生動物みたいな印象だけど、パンチは強め。秋田は逆に、ぐいぐい話しかけてくる。『お前ら無職か?』といきなり言われたり、おみやげにリポビタンDを6本渡されたり。

 

そして、小林くんの「おじいちゃんっ子&おばあちゃんっ子レーダー」でキャッチされた有名人3人の撮影にまつわる話も。

 

小林くんが中学生の頃から聴いていたという山梨のラッパー・田我流さんは、団子屋さんでの撮影。

小林:団子屋にあった石がやばいって話をずーっとしてた。田我流さんは石にしか食いついてなかった。

長嶋:音楽誌とかではできない、いい意味でざっくばらんな対談ができました。

 

Yogee New Waves  角舘健悟さんは、実のばあちゃんとの対談。

小林:東京のばあちゃんっ子ってどうなんだろう?と気になってオファーした。飯山では茶の間でする「お茶飲み」を、健吾さんとおばあちゃんは新宿の喫茶店で!すごいなあと。

 

さらに「あまちゃん」をばあちゃんと一緒に観ていたという小林くん。「絶対じいちゃんばあちゃん好きだと思った」と、のんさんにもオファー。見事、撮影のOKをもらったそう。

小林:女優さんってすごいと思った。表情がコロコロ変わる。

などなど、実に楽しかった様子で撮影について語ってくれました。

 

 

大好きおじさん登場!

 そして、いよいよ第2部「鶴と亀大好きおじさん in 奥信濃」。

「小林くんのことが大好きなおじさんが集まり語り合う」というこの謎イベントですが、今年2月の東京編に続き、2回目の開催。

今回は飯山が舞台ということで、地元の強烈なおじさん3人がゲストとして登場しました。

 

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 (写真左から)

“カレーおじさん” 木原孝さん

飯山にあるカレーの店「ペンティクトン」店主。なんと写真集を400冊購入!

 

“印刷おじさん” 足立崇さん

この方の「足立印刷」で、フリーペーパー「鶴と亀」の1〜5号まで印刷しているそう。

 

“仏壇屋おじさん” 鷲森秀樹さん 

地元の仏壇屋「神仏の鷲森」の若旦那。「鶴と亀」にずっと広告を出稿してくれている大スポンサー。

 

と、「鶴と亀」のフリーペーパー初期から支え続けたおじさんたち。皆が小林くんを下の名前で「直博」と呼ぶのも地元感があります。

対する東京勢のおじさんは、

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(写真右から)

“ジモコロおじさん”徳谷柿次郎さん

ウェブメディア「ジモコロ」編集長。取材で小林くんと日本各地をまわり、「誰よりも一緒に風呂に入っている」そう

 

“本屋おじさん”柳下恭平さん

神楽坂の「かもめブックス」と校正・校閲の会社「鴎来堂」代表。東京勢の中で、小林くんに会ったのは一番最初なんだとか

 

初っ端からアルコールが入って飛ばしまくる飯山のおじさんたちに、東京勢は押され気味。と、ここでもう一人のゲストが…

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なんと、編集者の藤本智士さんがシークレットゲストで登場!何も知らされておらず、本気で驚く小林くん。

 

藤本さんは秋田のフリーマガジン「のんびり」や嵐の本を手がけたベテラン編集者。

この日は宮崎でイベント登壇の予定だったものの、台風の影響でイベントが中止に。なら長野へ行けるやん!と神戸から片道5時間かけ、急遽やって来たそう。小林くん愛がすごい。

 

シャイな飯山のおじさんたち

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メンバーもそろったところで「大好きおじさん」本番へ。

最初のトークテーマは「小林くんの好きなところを言い合う」というもの。

 

柳下:気遣いが自然にできるところがいい。さっきの市長が話している時にも、BGMが大きかったので自分から下げに動いてた。

藤本:今日の主役なのに、いちばん黒子みたいな服を着てる。その謙虚さが好き。

柿次郎:車を運転してて、不意に「秋が来たっすねー」と言えちゃう自然への感度の高さが好き。

 

という東京&関西のおじさんたちに対し、飯山のおじさんたちはというと…

 

木原:直博が大学生の頃、俺のところにこんなフリーペーパーを作りたいんですとやって来て。内容に全然ピンとこなかったんだけど、俺も若い頃、地元を盛り上げる祭りをやる時に、周りの大人が助けてくれた。だから同じように協賛金集めを手伝ったんだ。だから今の鶴と亀があるのは俺のおかげなんだな

 

柿次郎:それ、「小林くんの好きなところ」じゃなくて「俺のすごいところ」になってません?

と、なぜかぎこちない様子。

 

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ここで判明したのが、飯山の人は「誰かを人前で褒めるのが苦手」ということ。

当初予定されていた、

「地元おじさんの小林くんへの愛に、アウェーおじさんたちが焼きもちを焼く」という構図は今いち成立せずも、小林くんのエピソードが次々と語られます。

 

足立:地元の飲み会のあと、直博は皆んなを車で送り、面倒を見てくれる。そこまでしてくれるのは彼くらい。

鷲森:直博がフリーペーパーの広告を頼みに来た時、初対面だった。よくある飛び込み営業かと思ってたら、1時間くらい「こんなことをやりたいんだ」とずーっと語る。その熱意に店のスタッフも感動して、その場で広告の協賛が決まった。

 

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話はたびたび脱線しつつも、小林くんへの想いが随所から伝わる飯山のおじさんたちの話。地元の人の支えがあって、あの「鶴と亀」ができたんだなあと感じます。 

 

小林くんは「全日本人の孫」。でも現状で満足してほしくない

イベントの最後には、おじさんたちから小林くんへメッセージが贈られました。

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柿次郎:写真集が売れても、また全国へ2泊や3泊の取材旅行に行きたい。どんだけ売れても安いお金で写真をとってほしい(笑)!

柳下:後輩としての小林くんが愛おしい。でもこれから先、30歳を超えて先輩側になった時の小林くんが楽しみ。

藤本:小林くんは「全日本人の孫」。高齢化社会だから、未来のスターになることは間違いない。じいさんになっても孫みたいであってほしい。

 

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木原:若い世代で頑張ってる直博は、飯山の星。影響を受けて頑張ろうっていう人がどんどん増えてほしい。

鷲森:でも、まだまだ伸び代がある。だから写真集はあくまでスタート地点。現状で満足してもらっちゃ困る。

足立:「“鶴と亀の小林くん”って言われるのが嫌なんすよね」ってポロっと言うのを聞いたことがある。だから「そういえば鶴と亀って本を出してたね」って言われるくらい、ビッグになってほしい。僕たちは小林くんに夢を託してる。

 

アツいおじさんたちの言葉を受けて、小林くんは…

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小林:僕は誰よりも「奥信濃の男」になりたいんです。地元の祭りみたいな伝統ももっと伝えていきたい。そして、県外の人と飯山の人と、全部いいとこどりして、面白いことをやっていきたい。

 と語りました。

「奥信濃の男」と聞いた時の、地元のおじさんたちの何とも嬉しそうな表情が印象的でした。小林くんのこれからが本当に楽しみです!

 

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お知らせ

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9月28日(木)〜10月4日(水)、どこでも地元メディア『ジモコロ』と長野発の人気フリーペーパー『鶴と亀』のコラボ写真展「ジモト」がアイデムフォトギャラリー「シリウス」にて開催されます。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000746.000002663.html

期間: 2017年9月28日(木)~10月4日(水)

日時:午前10:00~午後6:00 (入場無料)、最終日 午後3:00まで 日曜日・祝日休館

会場:アイデムフォトギャラリー「シリウス」 (東京メトロ丸ノ内線新宿御苑前」駅そば)

☆9月30日(土)14時〜15時は、ジモコロ編集長・徳谷柿次郎さんと鶴と亀の小林直博くんによるトークイベントも開催。当日は二人も在廊予定です!