『人生フルーツ』、夫婦の静かな暮らしの実験
ポレポレ東中野で映画『人生フルーツ』を観てきました。
建築家の津端修一さん、英子さんご夫妻の暮らしを記録した、東海テレビ制作のドキュメンタリー映画です。
修一さんは90歳、英子さんは87歳。修一さんは建築家・都市計画家で、かつて「阿佐ヶ谷住宅」や「多磨平ニュータウン」の設計に携わった方。その後、1960年代に自然と共生したニュータウンを構想するも、経済優先の波に阻まれ、修一さんの想いと異なる、無機質な団地群が生まれます。
そこで修一さんは、「ひとりで里山を作り出す実験」を始めます。自宅の周りを雑木林が囲い、畑には野菜や果物が実り、野鳥が訪れる家。そこで「半自給自足」的に、自然の恵みをいただきながら、津端夫婦は暮らしています。
それはいわゆる「ていねいな暮らし」なんですが、単にそれだけの言葉で収まるものではないんですね。
まず、修一さんの「理想郷」だということ。「暮らしとは本来、自然と共にあるべき」というような修一さんの脳内にあるイメージを、何十年もかけて具現化したのが、津端家の暮らしだと思います。
そして、その理想を叶えるためには、英子さんの存在がなくてはならない。
「なんでもお父さんの言う通りにしてあげたい」「旦那がよくなれば、巡り巡って自分もよくなるから」と英子さんは語り、「英子さんはどんな存在か」と尋ねられると、修一さんは「僕にとって最高のガールフレンド」と答えるんです。70年近く連れ添って出るこの言葉!!
夫婦の関係性に世代的なギャップも感じますが、確固たる思想があり、それを実現し、後世へ残すための「暮らしの実験」 としての二人の生き方、憧れる人が多いのもよく分かります。
あとは映像の力〜〜ともなりました。風の音や枯葉を踏む音、2人の会話のちょっとした間や息遣い……文字のインタビューだけでは表現できない空気感が詰まっていて。ちょうど先日のジモコロ取材で同じようなことを考えていたので、改めて文字も頑張らなと。
思いつくままですがそんな感想でした。
人生フルーツ